クルド人もうひとつの中東問題 (集英社新書)



クルド人もうひとつの中東問題 (集英社新書)
クルド人もうひとつの中東問題 (集英社新書)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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「クルド」を問題視する上での入門書

題名からわかるように、この本は「クルド」を紛争・国際政治の観点から、問題として語る視点に終始している。

大手のベテラン新聞記者が書いていることもあってか、文章は「わかりやすい」ものの、「民族」「国家」といった用語・概念をためらうことなく早急に用いている感がある。
例えば、題名の「中東問題」は、いわゆる「アラブ・イスラエル紛争」を指しているものと思われるが、前者の呼称は日本では大手マスメディアが一昔前に使っていたものにすぎない。
その上で、「中東問題といえばアラブ・イスラエル紛争だが、それだけではない」と、アラブイスラエル紛争以外のいわゆる中東地域の諸問題を過小評価する意識があると思われる。

人名・地名に関しては、日本のマスメディアがやりがちな「長母音省略」が目立ち、
用いている文献も全て英語・仏語のものである。

読んでいて非常に「理解しやす」く、スラスラと読み進められる本だが、その視点と書き口に日本のマスメディアの「中東報道」の偏向性が表れていないわけではない。
「クルド」を「国際問題」の観点からマクロ視する上では、いい入門書になるであろう。
クルド人問題入門として最適

トルコ、イラク、イランの国境地帯にペルシャ語系の言葉を話し、イスラーム・スンニ派を信仰する祖国を持たない尚武の民族クルド人が存在する。その亡国の歴史から「悲劇の民族」というイメージが広まっているが、オスマン帝国下でアルメニア人虐殺の手先になったり、イラク戦争後、アラブ系民衆がどちらかというと「アメリカ出て行け!」と叫んでいるのに対し、クルド人はむしろ積極的にアメリカのイラク政策を支持している。このようなメソポタミア地域の複雑なファクターを担うクルド人とクルド問題について広範な知識を得るのに最適な一冊である。古代シュメールに現われる事蹟から、周辺諸民族による弾圧とそれに対する抵抗、そしてフセイン政権崩壊後のクルド人の動向を詳細に解説している。
ニュースに埋もれている「クルド人」を発見する為に

「クルド人」を中心に据えた中東の通史です。クルド人問題は、中東問題を論じるのに避けて通ることが出来ませんが、クルド人の関与した事件にクルド人という表現をこれまで必ずしも使っていなかった気がします。それに加えて、トルコ、イラン、イラク、シリアの各国の利害関係、各政党間の内ゲバ的な闘争、そして欧米諸国の様々な思惑などが絡み合い、問題が複雑になっています。本書は、ジャーナリスティックな視点ながら、そんな絡み合った糸を解きほぐして、クルド問題の全体像を浮き彫りにしています。
新書という手軽なフォーマットとして、今までありそうでなかった企画だけに、クルド人問題を知りたい人には是非オススメの一冊です。
千の言葉

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クルド現代史の概観

 クルド人にとって20世紀は悲運と内紛に満ちた世紀だった。中東の産油国ばかりが注目を浴びる日本にとって、クルド問題は確かに「もうひとつの中東問題」である。それは、国家、民族、イスラムがそれぞれ複雑に重なっているこの地域の象徴とも言える大問題であり、今後も当分は不安定要因として中東情勢に暗い影を投げかけ続ける。



集英社
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